『本(工芸・うつわ)』 の記事

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2016年2月4日

「内木孝一の一生使える器選び」 内木孝一著 講談社

表参道にあるうつわのみせ「大文字」のご店主による器選びの指南書です。

1982年の開店以来、「ふだん使いの良質な器をふさわしい価格で提供すること」にこだわっておられます。

お店のサイトには

ふだん使いとしてぜひお勧めしたい器を、ブランドや作家名に頼ることなく、「大文字の眼」でセレクトして提供しております。

とあり、見習わせていただきたく、精進しなければと思います。

器の選び方、買い方のアドバイスのみならず、使い方、お手入れの仕方、盛り付けのポイントなど、ためになる内容も多く興味深いです。

氏が本書でも書いておられますが、一器多用(一つの器を多種多様な用途に使う)できるうつわは大切なポイントだと思います。収納スペースのこともありますし、沢山のものを持ちたくないと考える方も増えてきていると思うのです。一つのボウルでサラダも、フルーツも、時にはスープなどにも使えたらよいお買い物をしたなと思えそうですよね。

大文字のホームページ http://www.daimonji.biz/

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2013年7月21日

ガラスの道 由水常雄著 中央公論新社 

ガラス作家であり、ガラス研究に関する著書も多く執筆されている由水常雄氏のお話を聴く機会がありました。興味深いので、メモ書きですが、シェアできればと思います。

当初のご研究は東西文化の交流史だったそうですが、ガラスの不思議さ(調べれば調べるほどわからない事が発見される)に惹かれ、現在に至っておられるようです。

正倉院におさめられたガラスの研究がスタートとの事。ガラスは人工のものであるので、つくられた時代でいろいろなことがわかるそうです。氏は、それがどのようにつくられたのか知る必要があるとのことから、実際に正倉院ガラスを復元されています。
以下の画像は由水常雄氏のホームページより転載しました。

5000年ほど前にガラス作りがはじまった。吹きガラスがはじまったのは紀元前1世紀ごろ。初期は透明のものはなかった。紀元前4から5世紀に、透明になったものができる。鉄分(酸化鉄)が青や緑をつくりだすので、マンガンの赤紫で青緑を打ち消す。明らかに原料の性質をわかっていたと思われる。

紀元前4世紀から後1世紀に色ガラスの技術がエジプトで発達。中国の前漢書に、エジプトでは全ての色のガラスがあると記されている。

大英博物館にある、粘土板文字には、ガラスのつくり方が書かれていて、メソポタミアでは元素記号で調合法が書かれていた。

メソポタミアの絵付きコップは、現在の技術をもってしてもつくれるものではない。絵が崩れておらず、表裏同じ模様というのは、今でもつくり方がわからない。熱膨張率がそれぞれ違うのにひずみができておらず、古代の時点で違う融点、熱膨張率の違うものどうしを組み合わせる技術があったということである。

<最新のガラスの話>
1mmの中に20もの層があるガラスに半導体のチップを入れることが研究されている。
抗菌ガラス。光を90度曲げるというガラスで、10年くらい前から窓に利用されている。
バイオグラス。人骨成分を混ぜて5000度で焼くと、骨成分が表面にでてくるので、ここに筋肉が付着するのではないかと考えられていて、研究されている。
NASAがロケットのボディにつかおうとしているガラスは、1立方メートル3kgという超軽量ガラス。

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2013年3月10日

「美の猟犬」 安宅コレクション余聞 伊藤郁太郎著 日本経済新聞社

大阪市立東洋陶磁美術館館長でもある著者がラジオ番組(2012年3月までNHKラジオ第一で放送されていた「ラジオビタミン」)に出演された。

放送は、東日本大震災の東電福島第一原発の事故後だった。彼は、「想定外という言葉は嫌いです。」「人間の想像力はそんなものではない。」というような事をおっしゃったと記憶している。80歳とは思えぬ語り口に魅了され、著書を読んでみたいと思ったのです。

東北大学文学部美学美術史学科卒業後に安宅産業株式会社に入社したいきさつや、安宅氏の横顔や氏とのエピソードが興味深いです。安宅コレクションの収集裏話も。

美、人、に対する筋がピシッと感じられ、魅力的な方だと感じました。

以下引用

p234-235
「美は何ものにも仕えない」、という大原則はあるにしても、やっぱり人間、生きている生が作ったものが芸術であって、自然の美というのもあるけれども、芸術の美というのはあくまで人間が作り出したものだから、人間精神に何か及ぼすところがなければ美術の存在価値はないですよ。それは平らな言葉で言うと「人生との関わり」だろうと僕は思っている。
(中略)
人間生きているわけだし、生きている限り、やっぱりある程度意味を感じないと生きがいがないから、少しでも心の琴線に触れるものがあれば、人というのは必ず魅せられる。そういう信念は僕にはあります。
p247
単なる独善やひとりよがりは許されない。そこに李朝陶磁の鑑賞が、人格的なものに深くかかわってくる所以がある。心貧しく卑しい人は貧しく卑しい物しか取り上げられず、目も心も未熟な人は、外面的な美しさのみに目がうばわれる。それに対して、心豊かで自由な境地に飛翔できる人は、何よりも内面的な美しさを求め、心の糧となり慰めとなるものを見出していく。その人が何をどのように評価するかによって、その人の見識はもとより、人格的なものまであらわれてくるところに、李朝陶磁-高麗茶碗までふくめて-の面白さとおそろしさがあると言えようか。

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2012年11月25日

別冊Discover Japan 「うつわ作家101人の仕事」 枻出版社

2012年10月に出版されました。あ、またこういうシリーズだなと思いつつも買ってしまいます…。

嬉しいことに、お取り扱いさせていただいている、土井善男さん、清水なお子さん、松村英治さん、が紹介されています。

人気ギャラリー&ショップ店主の視点、気になる作家さんとうつわも多数掲載されいますので、うつわ好きには楽しい一冊です。

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2012年1月30日

「ささやかな日本発掘」 青柳瑞穂著 講談社文芸文庫

今年はじめて読んだ随筆で、なかなか面白かったので記します。
著者は仏文学者、詩人でもあり、美術評論家であり、骨董品収集家でもある。ルソーの「孤独な散歩者の夢想」の翻訳も手がけています。

彼が収集したものたちとの出会いのエピソードなどが紹介されています。
街の古道具屋で購入した掛軸が博物館ゆきの代物だったり、ある田舎の小川で洗うために浸け置きされていた石皿をおばあさんから譲っていただいたりなど、26篇が収められています。

その中の、やきものに関しての二篇から一部引用いたします。

「やきものの体温」より
 イヌやネコや小鳥を愛するのは、楽しいことだろう。でも万一、むこうから愛されたとしたら、どんなに心苦しいことだろう。
 むこうが生きものだけに、ひょっとしたら、そんな危険もなくはあるまい。その点、ヤキモノはどんなに愛してやっても、むこうから愛して来るようなことは先ず絶対にないから安心だ。(中略)
 ヤキモノの美しさは、第一に、それが冷たく、非情なものであるゆえだと、私は強調したい。
 人にこびたり、(ああ、私は動物のそれにゾッとするんですが、人間より利口だとか、愛情があるとか、そういう比較も聞きたくないんですが)人に秋波をおくったり、そういうマネをしないところに、この生命のないものの生命があるのではないだろうか。もっとも、ヤキモノでも、ごくごく悪質なのは、絶えずこれをやっているところをみれば、イヌやネコでも、ごくごく良質なのは、あんがいに無表情なのかも知れない。表情がたくさんだからといって、それだけ生きているという証拠にはならない。
 非情だからといって、死んでいるわけではない。要は、生命力の強さ、弱さなのである。

「あたたかさ・やわらかさ・しずけさ」より
 日本的な美しさに、高さや深さが欠けているわけではない。ただ、あたたかさ、やわらかさが、その美しさにヴェールを着せ、ほのかにさせているために、ともすれば実際の高さや深さの寸法がぼやけてくるのだ。
 あの水蒸気が日本の山水草木に特質をあたえているように、あたたかさ、やわらかさは、日本の芸術に重要な作用をなしていると言っていいだろう。この、あたたかさ、やわらかさから、おのずと、閑雅な境地がひらける。

 たとえば、ここに一個の楽ちゃわんがある。それはただに形うつくしく、手ざわりやわらかくあるばかりでなく、しずかな茶わんでなければならない。たんに感覚的に美しいばかりでは最高のものとはいいがたく、しずけさ―ここにこそ真に日本的の深さはあるのである。

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2011年11月14日

「スージー・クーパー ロマンス」 飯塚恭子著 フェリッシモ

図書館でぶらぶらとしていたら、「スージー・クーパーのロマンティックスタイル」(マーブルトロン)という本が目に入りました。表紙には愛らしいバラが描かれたカップ&ソーサーが三客並んでいます。いつかどこかで目にしている絵柄、それまで作者がスージー・クーパーという女性だとは知りませんでした。彼女についてもう少し知りたいと思ったので、この本を読みました。

スージー・クーパーは1902年の英国生まれで、陶磁器のデザイナーであり、自身が設立した製陶会社の経営者でもありました。

本書の副題は「ロイヤル・デザイナーの軌跡」とあり、モチーフやパターンについて、どのようにして彼女のデザインが世界に広がっていったのか、スージーの一生とロイヤルファミリーとの関係などがわかります。

著者自身がスージー・クーパーのコレクターというだけあって、熱い思いが伝わってきました。

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2011年9月10日

「毎日のうつわ」 遠藤文香著 日本文芸社

フードスタイリストとして活躍されている著者が、気軽に使える2,000円~5,000円台のうつわを選び、スタイリングされています。使い回しのできる基本のうつわを、和食、洋食、中華・韓国料理、エスニック料理仕様にコーディネイトしてしまう技は、さすがだと思います。

毎日使う食器はやはり使い回しが多くできると、スペースにもお財布にも嬉しいですよね。

発売が今年2月と新しく、巻末のショップリストには大御所実店舗の他、比較的新しいお店やwebショップも載っているので、お好きなうつわを見つけるのに役に立ちそうですよ。

80頁に掲載されている石川昌浩さんのガラス花器は、弊店でも取り扱っております。宣伝まで。

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2010年12月4日

「崖っぷちの木地屋」村地忠太郎のしごと 松本直子著
未来社

お世話になっているスタジオ KUKUの谷恭子さんが、KUKU便り「こころもよう」を2、3ヶ月毎にお届けくださっている。A4用紙を三つ折りにした横書きのもので、工房のある信州小諸の季節の移り変わりや、展覧会のこと、身の回りの出来事などが写真とともにつづられていて、毎号楽しく読んでいます。前号で、「9月に松本で開かれた『木の匠たち』展に、村地忠太郎氏がいらした」、「93歳の現役の職人さんは、優しいまなざしで笑顔で接し、作品をご覧になるときは、時に真剣に厳しい目で見入っておられました。」とあり、終わりに、表題の本を紹介されていました。93歳の現役の職人さん!!これだけでも私は大変に興味を持ち、また「崖っぷち」という言葉にロックンロール的な響きを感じ(反骨的な趣に惹かれるのか)、本を取り寄せました。

著者の松本直子さんは、上松技専での訓練終了後、村地氏との運命的とも言えるご縁で弟子になります。彼女のリズム、話しの内容、わかりやすい文章のお陰で、興味深く一気に読んでしまいました。強い意志と前向きで明るい性格、行動力に魅力を感じます。彼女が師匠村地氏の事や、かつて木曾福島でつくられた春慶塗りの事をこの本で伝えてくださった事をありがたく思います。

村地忠太郎氏は木曾福島で生まれ、14歳で生家の木地屋の仕事に就き、今も現役の木地師として仕事を続けておられます。仕事場が「崖屋造り(平地の狭いこの地方では、川岸ぎりぎりまで家を建てるそうで、道路に面する表側から見ると平屋に見える建物でも、裏手の川側から見ると平屋に見えていたところの下に部屋があり、二階建てまたはそれ以上になっている造りのことだそうです。)」で、木曽川川岸の崖っぷちにあるのも、このタイトルにかけているようです。

本書から村地氏の真摯で実直、妥協はなく、淡々と日々精進されておられる姿勢が伝わり、心打たれます。若い方々の作品も積極的にご覧になり、好奇心と探究心を燃やされている、脱帽です。時にユーモラスな所がまた魅力です。

著者はこう書いています、

村地忠太郎のしごとが貴重なのは、木地屋として、「木曾漆器」のなかでも、特に明治の中頃に始まり、昭和中頃に絶えてしまった「ヘギ目」の「木曾春慶」の木地をいまも伝えていることだ。

「ヘギ目」。その美しくも、堅牢な目。
機械や鋸で木を挽くのではなく、「木を割り」、「木をへぐ」から、木の目は切れることがない。上から下まで貫くように目が徹っているので、「ヘギ板」は薄くとも丈夫だ。そして、「ヘギ板」でつくった器は驚くほど軽くて、品が良い。

かつて漆器を送る時に、破損を防ぐよう角々に「ヘギ板」をかませていたそうです。明治の中頃、東京の問屋がその美しさに気付き、ヘギ目を活かすことを木曾福島の塗師屋に進めたというのが、この地で「ヘギ目春慶塗」がつくられるようになった始まりと言われているそうです。

著者と村地氏の出会い、村地氏と谷さんとの出会い、その谷さんとの出会い、巡り合わせのご縁に感謝します。

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2010年11月23日

「めぐりあう日々の用品」 津田晴美著 マガジンハウス

著者は1982年から雑誌や広告でフリーランスのインテリア・スタイリストとして働き、近年は東京の新宿パークタワーに「クインテッセンス」というショールームを構えておられます。本文は、雑誌クロワッサン673〜782号に掲載されていた「めぐりあう、日々の用品。」を再構成、加筆、修正を加えたものだそうです。

副題が「ずっと使いたい87のもの」とあるように、87のものや道具が、4部構成(1・はたらく、2・あそぶ、3・もてなす、4・たしなむ)で登場します。部ごとにエッセイがあり、こちらも興味深く読みました。

「家のしごと」の冒頭、

家のしごとのひとつずつは、なんでもないことのようですが、小さなことが寄り集まって、時の層をなし、ひとの芯をかたちづくります。

の一文に背筋をのばされました。著者が、「新しいデザインや商品というだけでは、もはや意味を見いだせない」とおっしゃているとおり、ものの紹介が主ではなく、ものとのめぐりあいのエピソード集です。

素敵〜、便利そう、高くてとても私には買えない…などの数々。因に私が一番欲しいと思ったものは、穴専用のブラシ。注ぎ口洗いブラシ4点セット630円!一番小さいものはナイロン素材で、他3点は相手の素材に傷をつけない豚毛100%だとか。

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2010年10月11日

「和の器」 家庭画報特選 世界文化社

2007年発行です。最新保存版と銘打ってあるだけに、かなりの重さと写真のボリュームです。

写真で見て、いいなあと思ったら、取扱いのあるお店を訪ね、実際お手に取ってご覧になられるのには助けになる本でしょう。

陶磁器、漆器・木工、ガラスの人気作家の工房を訪ねていたり、お気に入りの器が手に入る全国器屋&ギャラリー100選が掲載されています。

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