2010年2月8日

「原点民藝」 池田三四郎著 用美社

原点民藝

著者の池田三四郎さんは、約30年、柳宗悦の門下として学んでおられました。明治42年、長野県松本市の生まれで、東京にて建築写真業を自営され、後に(株)松本民芸家具の代表取締役会長、日本民藝協会常任理事、松本デザイン交流会議会長などを勤められました。

この本で日本と世界の民芸品を100点紹介しています。一、沖縄のガラス瓶から、百、河井寛次郎の皿まで、頁右に説明文、左一頁は写真です。このレイアウトが、本を手にした時、いたく気に入りました。なんともすっきりしていて無駄なものは見せない、いらない、というスタイル。高校生だった私には、2,000円は高めの本でしたが、手元に置いておきたいと思わせる一冊でした。写真はご本人が撮影され、「本書では最初に図版を見て、説明文はその後に読んで下さい。」と巻頭にお願いが書いてあります。

巻末に載っている論文「美しさについて」は、ご一読いただきたい文章です。
以下一部分を引用。

 また美しさを味得するということは、生き生きした印象を心に刻み込むことになる。これは驚きの世界であり、悦びの感情であり、物との親しさに結ばれる心である。そのように考えると、美しい物は何か人の心に与えるものを持っているはずで、それが物の風格であり、命であり、美しい物は死物ではないのである。その命によって引きつけられるように、人の心が物と解け合うといえるのである。物の風格というものは昔から物柄と言われ、人びとにおける人柄すなわち人格に通じる。『徒然草』の作者兼行法師は「物がらの良きがよきなり」と言っているし、物の命のことは臨済宗の栄西禅師が「命なきものは物に非ず」とまで言っているのである。

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カテゴリー:本(工芸・うつわ) |  コメント (0) |  投稿者:兵藤 由香

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