2010年5月7日

「カメラマンからカワラマンへ」 山田脩二著 筑摩書房

本の紹介というより、初めて山田脩二さんに会った日の事を主に書きます。

山田脩二さんという人物、生き方のスタイルに惹かれる私ですが、失礼ながら申し上げると、第一印象は「何この酔っぱらいのおっさん!」でした。

出会いは2002年、東京から三宮へ向う夜行バスの中。
それまで3列シートの夜行バスしか乗ったことがなかったので、夜行バスは全て3列シートだと思い込んでいたのですが、そのバスは4列シートの二階建て。幸い乗った時に隣の席は空席で、もうじき発車時刻だし、これなら横になって寝られる、と胸をなでおろしていたのです。

その矢先、男性が一人入り口に現れ、運転手さんに座席か何か、たずねているのです。
うっわー、凄いお酒臭ーい。それも日本酒臭。まさか、あんな人がこの隣にこないよね、もしそうだとしても、運転手さんが気を利かせて、うら若き女性の隣にこの酔っぱらいを座らせる訳がないよね、神様仏様どうか隣に来ませんように。千鳥足が近づいてくる、止まる。「あ、すいませんね、窓側です。よかったらあんた窓側行ってもらってもかまわないけど。」冗談じゃあない、隣だっていうだけで身の危険すら感じているのに、窓側に追いやられたら何されるかわからない…。「ここでいいです。奥へどうぞ。」

「酒臭いでしょ。すいませんね。」既に一階部分は日本酒臭で満たされてます!と心の中でつぶやく。あー、これじゃ今夜は眠れないよ〜。バスが走り出すと、隣のおじさんが何やら話しかけてくる。酔っている上に、ぼそぼそ話すので、何を言っているのかはっきり聞き取ることができないので、「ええ」とか「そうですね」と無難にそっけなく答えていたら、「あんた、可愛くないね。」とのたまう。おーっと、そうくるか〜?返事しているだけでも相手しているのに。薄暗い中で見える風貌は、坊主頭に仙人のようなあごひげ。どう見ても普通のサラリーマンではないな、かといって芸人さん?見たことないな。ひょっとすると…、行き先は神戸三宮でしょ、も、も、もしかしてその筋の人かも…。そう思うようになると、ちょっと怖くなり、態度は180度方向転換。まともに話しを聞いたほうが身の為だと、愛想のよい返事をし、こちらも質問などしてしまう。聞けば、敬愛していた先輩の法要が東京であって、その帰りとの事。「そんなに仕事してませんが、プロのカメラマンだったんです。で、今は瓦つくってるカワラマンね。」なんだそれは?これは眉唾。カメラマンとか言えば、女の子(当時既に女の子とは言えない年齢でした)が「本当ですか〜♡」とでも言うと思っているのかしら。半信半疑のまま、そんなに悪そうな人でもなさそうだと思うようになり、起きていることも出来ず寝ましたが、無事三宮へ到着。

大きいリュックサックを背負った私に、「あんた、これからどうすんの?」とおじさん。神戸から横浜までの帆船トレーニングに参加予定だった私は、港での集合時間まで荷物を置いて散歩でもしようと当初から予定していたので、そう伝えると。「なら、案内するわ。」辞退しようとも一瞬思ったのですが、街なかだし、明るいし、どうこうされる事もないだろうと判断した私は、それも面白いかもしれない、と考えたのでした。この話しを聞いた友人たちの多くは、「普通そこでついて行かないよね。」と言います。

ロッカーに荷物を置いて、近くの喫茶店で朝食を食べ、見てみたいと思っていた神戸モスクまで道案内していただきました。「この先に相楽園という庭園があって、丁度今、瓦の展示してるんですよ。」行ってみると、まだ開園時間前で、窓口の女性たちがお掃除をされています。「あら先生、今日はまた早くから何ですの?」「あら先生、おはようございます。」あちこちから声がかかる。言っていた事は本当だったんだ!ごめんなさい山田さん、この瞬間まで信じていませんでした。

そんなきっかけのご縁で、お付き合いが続いています。
さて本題のこの本、タイトルからして、駄洒落?と思わせる本ですが、山田脩二さんの人となりがとてもよく表れている一冊です。
ご興味を持たれた方は是非ご一読ください。

こちらは、山田脩二さんがカメラマンであることを証明する一冊。

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カテゴリー:山田脩二さん |  コメント (2) |  投稿者:兵藤 由香

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